Division of Blood Transfusion,Hiroshima University Hospital

自己血について

現在の同種血(=他人の血液)輸血は非常に安全になりましたが、しかし輸血副作用はゼロではなく、以下のことが起きる場合があります。

  • 他人の血液に対するアレルギー反応
  • 他人の血液に対する抗体ができて、輸血の効果が悪くなる
  • 免疫能の抑制が起こり、感染症などに弱くなる
  • 未知の病原体の感染

自分の血液を自分に輸血する自己血輸血は最も安全な輸血法と言えます。自己血輸血は手術の時に用いられる方法です。自己血輸血には表1のような種類があります。またそれぞれ利点・欠点があります。共通して言えることは、

  1. 大量の自己血輸血はできない
  2. 血液やその他の病気のため自己血ができない場合もある
  3. 自己血でも100%安全ではない(採取時に細菌の混入があり得る)ことです。

また悪性腫瘍の患者さんの治療として、自己の末梢血幹細胞を採取して保管しておき、化学療法の後お返しする“自己末梢血幹細胞移植”も広い意味の“自己血輸血”になります。本院の輸血部では、末梢血幹細胞採取後の処理、保管など、その治療の一端も担っています。

輸血部では特に“貯血式自己血”の推進に力を入れています。患者さん向けに使用している自己血輸血に関するものは,「自己血採血を受けられる方へ」の添付ファイルをご参照ください。

表1:自己血輸血の種類とその特徴

  特 徴 長 所 短 所
貯血式 手術前にあらかじめ採血して貯めておくもの ・簡便
・数回行うことができるので,比較的多量(大人で1200ml程度)の自己血が確保できる
・時間的余裕がないとできない
・採血に適した血管がないとできない
・採血時の合併症(血圧低下,気分不良など)がある
希釈式 手術室に入り,手術開始直前に大量の点滴を行って採血するもの ・自己血中の血小板機能が温存している
・モニターしながら採血するので安全
・採血量が少ない
・採血に適した血管がないとできない
回収式 手術時に出血した血液を機器を用いて回収するもの ・出血した血液の再利用であるため採血に対する患者の負担がない ・組織片などの異物の混入の可能性
・高価な機器が必要
・大量輸血で止血困難(抗凝固剤を使用するため)

自己血採血を受けられる方へ

自己血採血説明用パンフレット